正義の味方に愛された魔女4
龍二が碓井刑事、朝川刑事と共に部屋に入ると、
藤波辰彦と他に二人がリビングにいた。


さっき、抱きとめた時に百合が『今は三人。他に私を連れてきた人が一人いるよ』と言ってたから、
今はこれで全員なのだろう。


テレビのアクションシーンのようにはならず、
あまりにも早過ぎる警察の到着に唖然としていた三人を、
少しの抵抗で、取り押さえることができた。


「よし、とりあえず三人、拉致監禁現行犯逮捕。
あと一人、高橋慎二…指名手配だな」





「荒川、ずいぶん早いお出ましだったじゃないか。秘密兵器でも仕入れたのか?」


「あぁ、藤波、久し振りだな。
優秀な人材が居る、としか言えないな」


「へぇー、県警も少しは頑張ってるって訳だ。
そうだ、お前の嫁さん百合ちゃんってんだな、面白い女だ。
いいもの見付けたな、荒川」


「そりゃどうも。でも、あんたが名前にちゃん付けで呼べる立場じゃないと思うが」


「だってよぉ、百合ちゃんが先に俺を名前で呼んだんだぞ?辰彦さんって。はっはっは」


《なぜだ?何がどうして、そうなった…?》







裸足の私は、平田さんにおんぶしてもらってマンションのエントランスを出ると、
待っていた警察車両に乗り込んで、しばしの間、聞き取り調査に応じる。


「いやー百合さん、人質に取られていたのに、なんでそんなに元気で楽しそうなんです?
救急車も待機させてたんですよ?」


「あー、救急車まで…すみません。
辰彦さんがね……えっと、藤波辰彦さん。
色々話をしたりして、結構、気さくなおじいさんだったんですよ。
今ピザを頼むところだったんです。辰彦さんの奢りで。
助けに来てもらったのはすごく嬉しいですけど、
ピザ、食べそびれちゃいました。」


「ぶほっ…。
あの藤波と仲良くなっちまったんですか?
視えたでしょうが、過激派のトップなんですよ?
百合さん、クソ度胸がいいなあ。
やっぱり、ボスの女だ。」


「それ!ボスの女っていうやつ、なんだか『姐さん』みたいで、悪っぽく聞こえません?」


「聞くところによると、もう一つの呼び名が魔女だとか。
そっちの方がよっぽど悪っぽく聞こえますよ?
あ、この平田は腹を探られて困るような事は一切ございませんからねー。

でも、良かったですよ。
百合さんの第一報が的確でしたから。
本当に、無事でよかった。心配してましたよ。」


「ありがとうございました。ご心配お掛けしました。
でも、さすがは正義の味方集団です。
絶対助けに来てくれると思ってましたよ。」




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