正義の味方に愛された魔女4
「百合……おはよ。
疲れたんだよな、今日は色々ありすぎたから」


「あー。私、寝てたんだね、ふふふ、白雪姫かな?
寝ている間に年を取ってしまった白雪姫は、おじさんになった王子様のキスで目覚めましたとさ……。
ご飯、すぐ食べられるから待ってて」


「王子ぃ?……ガラじゃないな。
風呂、入ってくるからゆっくりでいいぞ。
寝ぼけて火傷するなよ?」





ご飯とお風呂のあと、私が寝室に入ると、
いつもはベッドで手ぐすねを引いて待っている龍二の雰囲気が、少し違う…。

ベットの半分のスペースに潜り込むと、いつものように抱きしめられたのだけれど。

あぁ。違うのは、今日の事件で龍二が自分を責めていたからだったのね。


「ごめんな……逆恨みの矛先が百合に向けられるとは。
これからは百合のセキュリティを強化しないとな。
店に防犯ベル付けるか?
これからは、一日に何度か連絡入れることにする……」


「まぁ、防犯ベルくらい付けてもいいけど…。
毎日何回も私用電話なんて、恐妻家かバカップルだと思われるよ?
そんなに大袈裟にしなくても…。
龍二はそういうお仕事なんだから、まず自分が狙われない様に気を付けて?
そっちの方が心配だよ。
私は私で何とか出来る範囲で気を付けて対処するよ。
今回は無事だったし」


「今回は、な。
まさか藤波のジジイが百合を気に入っちまうとは思わなかった」

《何が『百合ちゃん』だよ、気やすく呼ぶなって…》


「あはは…50にもなって、ちゃん付けはおかしいよね」



事件の話のついでに、さっきの夢の話をした。


「お袋さんの囁きは、いま一番、百合が欲しかった答えなんじゃないか?」


「答え……」


「俺も、自分が関わった人間が、出来れば幸せになって欲しいと思う。
でもこの仕事は、結果がそうならない事の方が多いんだ。

百合は人の言動以上の、心までよく視えてしまうから、
関わった者の心が幸せになれないのを目の当たりにして、
自分の事の様に居たたまれなくなるんだよな?

優しすぎて傷付かないように、
『相手の領域まで心配する必要はないんだ』と、
お袋さんが夢枕に立って言葉をかけてくれた……。

どうだ?俺の推察。
幾らか的を得てないかな?」


「……そう…か。
龍二、私の気持ちが解るのね。
おまけに亡くなって何十年も経ってる母さんの気持ちまで…。
何だかスゴいね、私の旦那様は」


「百合の事は何でも解りたいって、言っただろう?
俺の事を解ってくれる以上にはなれないけどな。
愛だよ愛……」


今夜の龍二は、とても優しく私を抱いてくれた…。


時々、龍二は私の心を視る力を持ってるんじゃないか?と思う……。





< 26 / 37 >

この作品をシェア

pagetop