正義の味方に愛された魔女4
「ねぇ、慎二、もう電話も終わったし、話し相手が欲しいからさ、口だけでも自由にさせてあげていいでしょ?」


「あぁ。でも余計なことは喋るなよ?」


「解ってる。世間話するだけだよ」


口が自由になったら、少し楽になった。


「あたしはね、美由紀っていうんだよ、48。
百合さんは慎二のちょっと下くらいかい?」


「私……50。美由紀さんと同年代ね」


「へぇー、百合さんの方が上かぁ。
荒川龍二って40くらいだよね、またずいぶんトシ離れてるね」


「うん10コ下、それでも良いって言ってくれるから」


「まあね、私も三つも上でいいのか?って思ったけどさ、相手がそれでいいんだから、ね。

でもさ、務所に入ってたから子供居ないんだ…。
あんたは?」


「前の旦那さんとの子が一人」


「そっか、二回目なんだ。ひとり、長かったの?」


「28年シングルだった。実は新婚なの」


「ありゃ……。それで、これ?
あんたの旦那は、うちの人に殺されるんだ。
可哀想にね」


「いや、龍二は死なないよ?私が死なせない」

心を動かす迄は私に出来ること。
でも高橋がどういう行動に出るのか……。
なんとか思いとどまって!
龍二を殺さないで!
二人も三人も殺めたら極刑かもよ……?


「無駄な15年の恨みは深いのよね。
あのときの仕事が成功してたら、慎二は組織の幹部に成れたかもしれないんだ」


「人生にさ、無駄な期間なんか無いよ?
その期間を自分がどう過ごすか、じゃない?

幹部に成れるほど熱心に打ち込める人なら、
服役経験で感じたものは悪いことばかりじゃなくて、
何かがあるんじゃないかなぁ」


「うるせえなあ、悪いことしか無かったよ。」


「そう…。私は服役したことがないから解らない。
適当なこと言ったかもね。ごめんなさい」


《百合さんに恨みはないんだよね、羨ましいとは思うけど。
幸せに、のほほんと刑事の奥さんで、守られて暮らしてきたのかと思ってたけど、
苦労してきて、やっと幸せになった感じじゃない?
旦那さん殺したら可哀想だ》


美由紀さん、優しいね。
高橋を説得してくれないかなぁ…。
無いわ。この人、旦那さん命だもんね。



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