セシル ~恋する木星~


どこをどう歩いたのかわからないうちに、気がつくと歩道橋の前にいた。
こんなところにあったんだ。

「わたし、歩道橋って好きなんだ」
無邪気にセシルが言う。

「じゃ、上ろうか」

「うん」

セシルは照れ隠しで、さっさとひとりで上り始めた。
四、五段くらい上ったとき、後ろから山口の声がした。

「ねぇ、セシィ」



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