セシル ~恋する木星~
ふいに呼ばれて振り返ったときだった。
ひとつ下の段にいた山口が、突然セシルにキスした。
上から人の降りてくる気配がして、セシルは慌てて前を向く。
若いカップルとすれ違うが、気づかれなかったのか無反応だった。
「びっくりした?」
「うん」
山口はまたセシルの腰に手を回すと、何事もなかったかのように歩道橋を上り出した。
ドキドキが止まらないセシルは、どうしていいかわからずに、黙ったまま歩いた。