セシル ~恋する木星~
山口と逢ってから一週間が過ぎようとしていた。
セシルは、毎日ではないにしても、ふとひとりになったとき、山口のことを思い出していた。
無意識に唇に指先を当てている自分に気づく。
触れたのはほんの一瞬だったけれど、もっと長かったような気がした。
もしもあのとき、セシルが慌てて離れなかったら、どうなっていたのだろう。
すれ違ったカップルが気付かなかったくらいのキスだもの、きっとどうってことのない、ただの挨拶だったんだろう。
相手はフランス暮らしの長い人だもの。
そう思おうとしても、どうしてもあのキスの意味を考えてしまうセシルだった。