セシル ~恋する木星~
エレベーターに乗ったのは、ふたりだけだった。
無意識に上を向いて階数表示を見る。
山口がそっとセシルの腰に手を回してきた。
「セシィ、好きだよ」
耳元で低音ボイスの甘い囁き。
「わたしも」
思わずセシルも、そう答えていた。
そして、ぴったりくっついたまま動けずにいた。
エレベーターのドアが二十三階で開いた。
「さぁ、こっちだよ、セシィ」
導かれるように、客室へ向かう。
先に山口が部屋に入り、セシルの後ろでゆっくりとドアの閉まる音。
その瞬間、セシルはぎゅっと抱きすくめられた。