セシル ~恋する木星~
山口は自分のバッグから赤ワインのボトルを取り出した。
「これね、姉貴にもらったんだ」
「そう?」
「俺はあんまり飲めないし、しかも結構甘いから、いいよ、って言ったんだけど……」
「うん」
「こういうのって、女の子は好きだと思うから」
飲めないと言いながらも、山口は慣れた手つきでワインを開けた。
ポンッとコルクの栓の抜けるいい音。
商売柄、お客さんに何度もワインを開けてあげていたのだろうか。
テーブルの上にいつの間にか用意されていたグラスに、トクトクトクとワインがゆっくりと注がれる。
透明感があり、少し深みのある赤色が、透明なグラスを少しずつ染めてゆく。