セシル ~恋する木星~
グラスに半分くらい入ったところで、山口はボトルをテーブルに置いた。
そして、セシルの隣に座ると、セシルにグラスを渡した。
「さぁ、どうぞ」
「え? わたしだけ? 山口さんのは?」
セシルが少し驚いた表情で言う。
「俺は、いいや。セシィ、飲んでごらん」
「ありがとう」
戸惑いながらも、セシルはグラスを手に取った。
「うわぁ、なんか優雅で甘い香り。……いただきます」
鼻の奥をくすぐるのは、葡萄だけでなく、なんだろう、別の果物のような芳醇な香りも。
グラスを傾け、ゆっくりと一口含む。その瞬間、思わず頬が緩む。
口の中を転がすうちに、まろやかな甘さが口いっぱいに拡がってゆく。