セシル ~恋する木星~
「これね、『周五郎のヴァン』って言う国産のワインなんだって」
「へぇ、国産なの?」
「うん。周五郎っていうのは、作家の山本周五郎。ヴァンはフランス語でワインのことだよ」
「そうなの?」
「うん。周五郎が生前、絶賛したんで、彼の名前が付けられたって話だよ」
「へぇ、いろいろ詳しいのね」
「ううん、姉貴が言ってただけ」
セシルは山口の話を聴きながら、もう一口飲んだ。
少しずつなのに、飲めば飲むほど幸せな気持ちになり、口角が自然にきゅーっと上がっていくのが自分でもわかるほどだ。