セシル ~恋する木星~
「……もしかしたら、あの男の人……顔は見えなくて声しか聞こえなかったんだけど、山口さんだったのかもしれない」
「なんでそう思うの?」
「さっきの過去世の話ね、愛してる人との仲を引き裂かれて修道院に入ったんだって」
「それで?」
「うん。お別れの日にふたりで海を見に行くの」
「そう……」
「うん。崖みたいなところから、海を見下ろしてた」
「それで?」
「波の音が、かすかにしてて……」
「うん」