セシル ~恋する木星~


つい先日、今世で愛を確かめあった山口との過去世で、子どもを身ごもっていただなんて。
しかも、その子が現在のセシルの子どもとして、今世を生きているだなんて。
人生はなんてドラマティックなんだろう。

セシルはこの偶然のような必然に、感謝せずにはいられなかった。
過去世では、きっとお腹に赤ちゃんがいたから、後を追って身を投げることをしなかったのだろう。

修道院での子育ての記憶はなかったけれど、きっとみんなに助けられ、子どもは立派に育ってくれたのだろう。
そして、今世でもセシルの息子として、セシルに希望と生きる力を与える存在となってくれているのだ。

だから、山口とはもう逢うことはないと思っても、淋しさや未練のような感情を持たずにすんだのかもしれない。



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