セシル ~恋する木星~
夏休みを東京で過ごした、最初の記憶は幼稚園のころ。
母親の実家である「東京ばあちゃんち」に行くのが、とても楽しみだった。
いつも一緒に暮らしているおばあちゃんと、区別するための呼び名だ。
東京ばあちゃんちには、母親の妹である叔母さんもいた。
叔母と言っても、セシルのひと回りくらい上で、まだ独身で若かったこともあり、セシルは母親が呼ぶように「チカちゃん」と呼んで友達のような感じでいた。
チカちゃんは横浜で働いていた。
セシルが夏休みに遊びに行ったとき、チカちゃんはいつも一緒にお風呂に入ってくれた。
お風呂でチカちゃんは、いろんな話をしてくれた。
セシルは、今日はどんな話なんだろうと、毎日楽しみだった。