セシル ~恋する木星~


セシルはコーヒーをベンチに置いて立ち上がると、両手を天に向かって大きく伸ばした。
顎をくいっと思い切り上に向け、喉を伸ばして空を見る。

雲ひとつない澄んだ五月の青空からは、細かいひかりの粒がキラキラとたくさん降ってきた。
セシルはとても満ち足りた気持ちになり、自然に口角が上がっていくのがわかった。

軽く目を閉じると、ひかりの粒を鼻から吸い込む。
全身に行き渡るようにイメージしながら。

その後、口からフーッと、ゆっくり細く長く吐き出す。
二、三回繰り返すと、セシルは目を開け、元気よく言った。

「チカちゃん、行こう!」

「どこに行くの?」

チカちゃんがキョトンとしている。

「明日に向かって!」



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