セシル ~恋する木星~
山口はクールな外見と、渋い低音の声からは想像できないほど、食べ始めると陽気で可愛い少年のような感じさえした。
どこから来たのかと聞かれ、セシルが横浜だと言うと、彼の実家も横浜だと言う。
中華街でバイトをしていたこともあるのだとか。
ツアー中、あまり話したことのなかった山口に、セシルは一気に親しみと同時に興味がわいてきていた。
「山口さん、日本には帰らないんですか」
セシルが尋ねる。
「うーん、たまに帰るくらいかな」
「お正月とか?」
「いや、正月は観光客も多いから、ガイドの仕事が忙しくて帰れないな」
「じゃあ、いつ?」
「うーん、特に決まってないけど」
「そうなんですね」