セシル ~恋する木星~
「うん、直子も気づいてた?」
「うん。服装もそうだけど、いつも『僕』って言ってたのに、ずっと『俺』だったし」
「そうそう。あの低音ボイスで『俺』とか言われると、なんかドキッとしない?」
「セシル、声に弱いもんね?」
「うん。山口さんの声、最初に聞いたときから、ちょっといい声だなとは思ってたけど、あんな間近で囁くように言われたら、ほんとドキドキしちゃう」
「あぁ、危ない、危ない。気をつけてよ、セシル」
「何に気をつけるの?」
「声に惹かれて、ふらふらしないでね」
「大丈夫よ。直子は心配性ね」
セシルは、思わず笑った。