セシル ~恋する木星~
第12章 シャルル・ド・ゴール空港で
翌日、ホテルに現れた山口は、いつもの藍色のスーツ姿だった。
「夕べはありがとうございました」
セシルと直子は、同じツアーの人たちにわからないように小声でお礼を言った。
山口もそんな雰囲気を感じ取ったのか、何も言わずに、にこっと笑ってウインクした。
もっと本当はいろいろ話もしたかったのだが、プライベートな話はしないほうがいいと思い、セシルも黙って笑顔を返すだけにした。
「みんな、忘れ物ない? 大丈夫かな?」
「はい」
「じゃ、そろそろ行こうか? バス待たせてあるから」
ツアーのみんなは、ホテルの前に停まっていたマイクロバスに次々と乗り込んだ。