セシル ~恋する木星~
第13章 エアメールと国際電話 


無事帰国して、一週間が過ぎようとしていた。
旅行中に撮った写真の整理をしていたセシルは、山口のことを思い出していた。
写真のどこにも写っていないのに、その存在感はとても大きかった。

パリで山口にもらった名刺を、フランスのガイドブックのパリのページに挟んであったセシルは、まじまじと見つめた。

そうだ、お礼状を出そう。パリでお世話になったのだし……。
そう思ったセシルは、心なしかウキウキしていた。
エアメール用のレターセットがあったことを思い出す。
普段は水性ボールペンで書くのだが、大人の人に出すのだからと思い、万年筆で書くことにする。

文面はごくシンプルに、パリでのお礼と山口の健康を気遣う程度にとどめた。
それだけなのに、なんだかラブレターでも書いたように、セシルは胸がときめいていた。



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