セシル ~恋する木星~
「そう、よかった。……ねぇ、帰ったら、今度飲みに行こうか」
「え? ほんとですか」
「うん。時間ある?」
「はい。いつごろですか」
「そうだな……土曜日とかは?」
「今週末ですか」
「うん。大丈夫?」
「はい。大丈夫です」
「じゃ、帰ったら電話するよ。番号、教えて」
「はい。いいですか……」
セシルは電話を切った後も、まだ夢でも見ているような気持ちだった。
信じられない。パリで出逢った山口と、日本で再会する。
それも、今週末。しかも、今度はふたりだけで。
自分の身に何が起きているのか、自分でもわからなくなりそうだった。