セシル ~恋する木星~


それから、チカちゃんが「気持ちのいい場所に連れてったげるね」と言って、案内されたのは山下公園だった。

太陽がキラキラまぶしい、真夏の午後。
海も光っている。その海には、氷川丸が優雅に浮かんでいる。
爽やかな海風が頬に気持ちいい。

セシルは大きく深呼吸した。
身体中の細胞ひとつひとつに行き渡るように、ゆっくりと新鮮な酸素を吸い込む。

その瞬間、胸が熱くなって、ふとある考えが浮かんだ。

「そうだ! ここは、わたしの街。わたしは、ここに住む!」

「考え」というよりも、すでに決まっていることのように、セシルにはとても自然に思えた。



< 7 / 201 >

この作品をシェア

pagetop