セシル ~恋する木星~
腕時計をチラッと見ると、もう五時十分前だった。
胸の鼓動が速くなっているのがわかる。
少し落ち着こう。
そう思って、セシルは持って来ていたベルガモットとフランキンセンスのエッセンシャルオイルを、それぞれハンカチの隅に少しずつ垂らす。
そして、ハンカチでパタパタと顔をあおいだ。
その瞬間、柑橘系の爽やかな甘さにフランキンセンスの落ち着いた香りが混ざって立ちのぼり、リラックスしてきた。
ハンカチにしみこんだ香りを軽く吸い込んでいるうちに、呼吸もゆっくりできるようになった。
鏡の中の自分ににっこり微笑むと、セシルはロビーへと急いだ。