セシル ~恋する木星~
「人生にね、偶然っていうことは、ないんだよ」
「わかります。必然ってことですよね?」
「うん。今日ここで、俺たちは逢うことになっていた」
山口の「俺たち」という言葉に、セシルの胸は敏感に反応した。
「ねぇ、山口さん。山口さんって、『俺』と『僕』、使い分けてます?」
「え? 一応、仕事のときは『僕』って言うようにしてるけど、普段は『俺』かな。なんで?」
「いえ、大して意味はないんですけど」
「可笑しい?」
「いえ、今日は仕事じゃないんだなって」
「もちろん。プライベートだよ」
「なんか、うれしい」
「俺も」