セシル ~恋する木星~
第17章 山口の過去
ふたりは並んで、駅前から少し外れたほうに歩いていく。
「ここにしようか」
白っぽい暖簾のかかった、こじんまりしたお店の前で山口が言った。
「はい」と、セシルは答える。
「いらっしゃいませ〜」
明るく元気のいい女性の声が、ふたりを出迎える。
清潔で感じ良さそうな串のお店だった。
まだ五時半で開店したばかりなのか、それとも穴場なのか、店内には誰もいなかった。