セシル ~恋する木星~
第19章 特別な感情
「俺にもね、実は夢があるんだ」
「え? どんな?」
「まぁ、ほんとにささやかな夢なんだけど」
「どんな夢? 聞きたいな」
「うーん、あのね、幸せな家庭を持つこと」
「え?」
「ちっぽけ過ぎて、拍子抜けした?」
「ううん。そうなんだぁって思って」
「うん。奥さんとはうまくいかなかったけど、娘はやっぱりかわいいからね。今度は幸せな家庭が築けたらいいなって」
「素敵な夢だと思う。ううん、夢じゃない。きっと、すぐ叶うと思うな」
「そうだといいんだけど……」
そう恥ずかしそうに言う山口が、セシルには可愛らしく思えた。
そして、自分は叶えてあげられないけれど、叶ってほしいと心から思った。