知らないこと。
「....いいの」
「よくないだろ」
「....もう、いいの」
静かにそう言えば、彼の小さな舌打ちと共に私の視界は、濁った夜空でいっぱいになって。それから不機嫌そうな顔をした彼で、視界が満たされた。
あの人とどこか似ているその顔で、私を見ないで欲しいと心で呟く。
「お前はいつも、そうやって逃げる」
「..別に...」
「なんで、そんなにすぐに諦めるんだよ」
「.....」
「お前は、自ら譲って、手放して、諦めて。それで、何でもないように笑って誤魔化して。」
「そんなことっ」
「...ないって?だったらそんな、泣きそうな顔してんな」
「あんたには、わかんないよ」