知らないこと。


「....なにしてんの」

「別に」

「...別にって」

「....俺は欲しいものは、手にいれたい」

「...だから」

彼の肩を押し返して、"なにを"と言おうとして、言葉にすることはなかった。表情の見えた彼が、泣きそうな顔をしていたから。


「ほんと、あり得ない....他の誰かを、よりによって兄貴をずっと想ってるやつなんて」

「...なにそれ、意味わかんない」

「うるせぇ、もう黙れ」

そう言って、彼は私の唇に同じそれを落とす。


すると、彼がすっと起き上がり、私の腕を引いて立たせてくれる。そして、そのまま考える暇もなく、私の手を握り歩き始めた。


「....ねぇ、ちょっと、」

「......」

「どこ行くの?」

「.....帰るんだよ、バカ」

そんな冷たい言葉を吐くくせに、力強く繋がれた手は熱を持っていて。私は思わず笑っていた。



*end*
< 4 / 4 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:13

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

ここにあるもの。
micoka/著

総文字数/3,465

詩・短歌・俳句・川柳19ページ

表紙を見る
とまった栞。
micoka/著

総文字数/1,189

恋愛(純愛)1ページ

表紙を見る
願い事は、ただひとつ。
micoka/著

総文字数/794

恋愛(純愛)1ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop