天狗に愛されて


『ふぅ〜…。』


〈人間は何もかも遅いですわね。〉


『まぁ…色々柵(しがらみ)があるからね。』


それで手遅れになったりもする。

その点、妖は自由だからやりたい放題。


『とにかく…助けてくれてありがとう。』


〈妖に礼など…今迄居ませんでしたわ。
人間は残酷な生き物ですから。〉


『確かに残酷な生き物よね。
同じなのに貴女達が見えるだけで私は…。』


あれ?私、何言ってるんだろ…。

初めて会った彼女に。


〈そんなに人間が嫌なら、
切り捨てれば良いじゃありませんか。〉


冷静な顔で平然と言う彼女は
優しい眼差しで私を見つめる。

私は人にこんな目で見られた事が無い気がする。


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