天狗に愛されて


〈あぁ…誰かそこに居るのか……?〉


目が……。


『私はここで人を襲う妖を祓う為に来ました。
何かご存知ですか?』


〈禍々しい妖気が渦巻いたと思い、
結界を張りましたが…。

とうに力は消え失せ、
好き放題させてしまいました。

土地神としての使命を守れぬとは
なんと情けない事でしょう……。〉


『力を失ったのは貴方のせいじゃないッ!』


涙が頬を伝い、一滴が狐神に落ちる。


〈妖に…涙を流すとは、
貴女はお優しいのですね。〉


ポウ…


淡い光が狐神の身体を包み込んでいく。


ありがとう……。


そう言って狐神は消滅してしまった。


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