天狗に愛されて


『これを。』


梨花ちゃんに柊(ひいらぎ)の一枝を手渡す。


「……??」


『柊は邪気を祓うって言われる木。
きっと、守ってくれる。

でも…万能じゃない。
鳥居を潜ったら決して振り向いちゃ駄目。
無事に帰りたいなら、良い?』


重要な事だから言い聞かせる。


「うん!」


キィ…


社の扉を開き、周辺を確認してから
鳥居に向かって走る。


『忘れちゃ駄目よ。
引き返したり、振り向かない。

何があっても鳥居を潜り抜けきる迄は
危機感を持って帰る事。』


「お姉ちゃんは大丈夫なの……?」


怖い目に遭った筈なのに、
人の心配をするこの子に苦笑いする。


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