天狗に愛されて
存在理由
「お前をここまで生かしたのは、
封印の綻(ほころ)びを埋める為です。
この地は四方に社があるのを知っていますか?」
" 北と西の守護が朽ちれば
この世は妖で溢れ返るだろーネ。"
天狗が言ってた社の事?
「その反応は知っているみたいですね。
丁度ここなんですよ。」
地面を指差す当主。
「妖の世に通ずる穴があるのは。
封印が解かれれば
神木家から一斉に妖がこの世に放たれます。
そうなる前に貴女を
封印の礎にすれば良いと考えた訳です。」
封印の礎…。
私が生かされたのはこの時の為で、
それ以外に存在理由は無い?
「さぁ、塞…やりなさい。」
それも唯一この屋敷で言葉を交わしていた
塞の手で封印される事が。
「……我…禍者封じなり…。」
もう訳も分からなくなって、
ただ塞の顔が涙で歪んだ。