天狗に愛されて
『その翼…。』
〈僕は『生成り』ではなく、
天狗として他の地に生を受けたのですが
片翼のせいで群れから置き去りにされました。〉
『そんな…自分の子供を捨てるだなんて。』
どんなに辛かっただろうか。
親に仲間に置いて行かれて…。
〈でも、お師匠様が拾ってくれた!
あの御方は本当に素晴らしいんです!!
そのおかげで片翼でも飛ぶ事が出来たんです♪〉
嬉しそうに話すこの子を見て私も嬉しくなる。
『えっと、貴方の事はなんと呼べば良いの?
天狗じゃアイツと被っちゃうし…。』
〈僕ら妖は人間みたいに個を表す名は
ありませんから…。〉
名前がないって不便ね。
『じゃあ…小天狗ちゃん?』
小さいからそのまま思った事を口にした。