天狗に愛されて
〈本当になきむしちゃんだね?〉
『……え?』
頬に何か伝う。
〈人間は卑怯だ。
涙を見せ、同情を誘う生き物。〉
『誘ってなんかいない!』
〈じゃあ、
毎日のようにここで泣くのは何故だい?〉
違う。
私は同情を誘ってなんかいない。
只、理解されない事が悲しいだけで
誰かに同情しろと言ってるんじゃない!!
〈良いじゃないか。
自分を責めていた人間が痛い目に遭って。
罰が下ったと笑えば良い。〉
『なんで、そんな事が言えるの?
大きな力を持つ者には
その力を扱う責任がある!
アンタは平気で傷付けられるの!?』
〈あぁ、出来るよ。
なきむしちゃんを
殺す事だってオレには簡単な事サ。〉
妖と人間。
この存在は永久に交わる事は無い。
でも、少しずつその糸は
私の知らない間に絡み始めていた。