天狗に愛されて


『私は何もしてない…。』


正確にはしようとしてた。

神水を使って皆の傷を治そうって思って、
あそこに行ったんだから。


「お前じゃなかったのか?
俺はてっきり譲葉だと思ったんだ。」


『ねぇ、他に変わった事は?』


「夕方位に俺らは救急車を待つ為に
グランドで待機してた。

そしたら、いきなり霧に覆われていたんだ。
その霧が傷を癒してくれた。」


霧…?
傷を癒すの霧なんて初めて聞いたけど。


「お前は怪我してねぇーんだな?」


『うん、大丈夫。』


蛇太郎が守ってくれたみたいだし。


「そうか、蛇神の事は誰にも言わない。
俺も助けられた身だしな。

じゃあ、また連絡が来たら伝える。」


『ん…分かった。』


扉越しに足音が遠退いて行くのが聞こえる。


久しぶりに小言無しで話したような気がした。


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