天狗に愛されて


寝ようとしても夢の事がチラついて、
やっぱり寝る事が出来なかった。


〈気晴らしに散歩して来たらどうダイ?〉


『……うん、そーする。』


蛇太郎の提案で私は外に出る事にした。

と言っても行く所が思い付くのは一つだけ。


『やっぱり、ここが一番好き。』


お決まりの場所。


チャプン…


足を水に浸けて、岩に寝転がる。


『冷たくて気持ちいぃ〜…。』


身体の中の悪い物が抜け落ちて行く感じ。

いつもだったらこのタイミングで
アイツが来るのに今日は現れない。


『……居るなら出て来なさいよ…。』


少しだけ寂しいと思い、目を閉じた。


< 82 / 316 >

この作品をシェア

pagetop