天狗に愛されて


〈…盛大に割ったネ。〉


冷ややかな目で大天狗を見る。


〈これでも静かに入ろうとしたんだけどネ?
ちょっくら結界が厄介でさぁ〜。〉


神木家の周りには
大層な結界が張られているんダ。

オイラはここで死んで、
ここで蛇神になったから大丈夫なんだけど
他の妖にとっては入れない領域ダ。


〈神格の大天狗サマでもキツかったカイ?〉


〈エゲツないねぇ〜。
全く…四方八方に張っちゃってさ?

服が焦げちまったよ!!〉


服から焦げた臭いがする。


それよりも、


〈そろそろ、ユズリハを離しなヨ。〉


中々離そうとしない姿に少し疑問に思う。


〈え〜?良いじゃんか!

でも…そろそろお暇(とま)するとしますか!〉


ユズリハを起こさないようにベッドに寝かせ、
大天狗は割れた窓から外へ飛び立った。


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