浅葱の桜
序章〜深紅の世界〜
「美櫻! ちょっと町まで降りない?」
「? 何か用でもあるんですか? 桔梗さん」
私は持っていた荷物を置いて首を傾げた。
お願いっ、というようにして手を合わせた桔梗さん。
私たち旅一座『花鳥座』は全国を巡って芸を披露してきた。
で、今回は初めての京都! 都と言われるだけあって綺麗な場所だなぁ〜。
なんて言っても山の上からしか見てないけど。
でも、怒られないかな? 菊姉ぇたち皆明日の準備で大わらわなのに。
「今日中に行きたいのよぉ〜っ! ね、私に付いてきてくれるのは美櫻だけなの!」
両腕を掴んで振られる。ちょっと、桔梗さん力強すぎますっ!
「わ、分かりましたからっ! ……早く、その用事を済ませてしまいましょう?」
涙目になっていた桔梗さんはぱあっと顔を輝かせる。
私よりも年上な筈なのに子供っぽい所があるんだよね、桔梗さんは。
こんな人が皆を惹きつける舞の踊り手だなんて信じられないなぁ〜。
「じゃ、私、これを置いてきますから。ちゃんと待っていてくれますか?」
「うんっ! ちゃんと待ってる!」
ああ、本当に勿体無い。喋らなきゃとっても美人なのに。
性格幼すぎますよ。
差がありすぎます……。