浅葱の桜
山から駆け下りた私。
「ひっく、うっ…………」
どうしてこうなっちゃったの。
どうして、私はたった独りでこんな所に立っているの?
ふらふらとした足取りで町にまでやって来たまではいい。
紅く染まった月はまるで私の事を嘲笑っているかのよう。
無くした。また、私が持っているのはこの刀だけ。
ねぇ、菊姉ぇ。私はこれからどうすればいいのかなぁ。
『生きなさい』
そう言って優しく笑う菊姉ぇの顔が脳裏に媚びり付いている。
「無理……無理だよぉっ」
皆が居ない世界でどう生きればいいの?
もう……動きたくない。動けない。
分かってた筈だった。刀は立派な凶器だって。人を殺せるものだって。
でも、舞にしか使わないせいでその重みを私は軽々しく扱いすぎていた。
仲間の命を喪うまでそんな事に気がつけないなんて。
嗚咽を抑えたまま震えた私に近づく足音があったのに、それに気づく事すら私には出来なかった。
「お前は……」