浅葱の桜
月明かりしか廊下を照らす光源のない中、私は才蔵の後ろを付いていく。
あれ……。おかしいな。
視界がじわじわと赤に染まっていく。
それと同時に景色自体が歪み出した。まるで全く別の世界へと私を誘うかのように。
全身から血の気が抜けて崩れ落ちる。
倒れ伏す前に才蔵に抱き起こされたものの、その手を思わず払い除けた。
「私に触らないで」
きつく言い放つと、才蔵はへいへいと手を振ってまた歩き出す。
ふるりと凍える背中を丸めるようにして両腕を抱き締めた。
怖い、な。
得体も知れない何か。
その影が私の背中にこびり付いて離れない。