浅葱の桜
「な……」
なに、それ……。
贄って……生贄の事だよね。
私は、生きたまま誰かのためにささげられるの?
まだ気が動転してる私の顎を持ち上げた御父様。
「お前の体も心も全てお前のモノではない。無闇に捨て去ろうなどと、ましては誰かとともに逃げようとなどするなよ」
その目には親としての愛情などない。彼が私に向けているのはモノとしての商品価値だけだ。
「出なければ菊の二の舞になるぞ」
「っつ!」
菊姉ぇ……。
「それだけだ。分かったのならさっさと部屋に戻れ、姫よ」
「姫なんて呼ばないで」
心が段々と凍っていく。
「私は美櫻。そして桜庭佐久よ」
「いいや。お前に名前など必要ない。お前は贄だ。自我を持つ必要も、この世に縛り付け置く為の名など枷になるだけだ」