浅葱の桜
「ひめさまはひめさまですよ? わたしのだぁいすきなひめさまですっ」
そう言ってのけたききの顔を思わず二度見してしまう。
「私は……わたし?」
「はいっ! ひめさまは、ひめさまで……しゅ」
睡魔に負けた様子のききは私の膝の上に頭をぶつける。
うぐっと痛そうな声上げながら体を起こしたきき。
「ひめさまはっ、わたしの立派なぁ……あるじなんてしゅっ。だから、ひめさまはひめさまあああっ」
あ、ついに負けちゃったみたいね。
私のせいで起こしちゃった様なものだからわざわさ起こしたりなんてしない。
「……ありがとう。きき」
私は、私……か。
ここでそれを認めてくれるのはきっとききだけだろう。
それ以外の人は私を腫れ物のように扱う。
それでも。
ききだけでも、私のことを認めてくれる人がいるなら。
「少しだけ、頑張ってみようかな」
ただ、殺されるのを待つのなんて嫌だから。