浅葱の桜
「がはっ」
座り込んだ私の足元に落ちた血は彼の口から吐き出されたもの。
その男からは刀が突き抜けていて、その刀が引き抜かれるとドサリと落ちた。
その後ろに見えた姿は。
浅葱の羽織を着て、月を背負っている彼の姿はこの場に似つかわしくないくらい。
綺麗
そう思わずにはいられなかった。
「君は何でここに居るの……かな?」
刀を下ろした彼は血を払うと鞘に収めた。
「なぜ……?」
何でだろう。私、何でこんな所に……。
「は⁉︎ な、何で泣く……」
私は彼に縋り付いて泣いた。
まだ、会って間もないのに。
彼だって迷惑だろう、そう思っているのに。
一人になってしまった孤独は自分だけでは背負いきれそうになくて。
こんな私の事を放っておかないでくれる彼の優しさにもう少しだけ。
触れていたい、そう思ってしまった。
「っ、ひっく…………」
「ったく……何だって言うのさ」
「ごめっ、なさいっ」
でも流れる涙だけは一向に止まってくれない。
「別に……謝らなくていい」
嫌そうな顔をしながらも彼は優しく頭を撫でてくれて。
もう少しだけ……このままでいさせてください。