浅葱の桜
「……君は何をしているんだ」
後ろを振り返るとそこには今さっきの男の人の一人が立っていた。
確か……沖田さん?
ずかずかと近づいてきた彼は私の座りこんだ先を見て絶句するのが見て取れた。
「私の……家族です」
腫れぼったい目でそっと笑みを作る。
「沖田さんは私を捕まえに来たんですよね。……もう少しだけ待ってくれませんか。彼女たちを弔うまで」
私は、菊姉ぇたちを弔わないといけない。
フラっと立ち上がると、馬車の中から穴を掘れそうなものを取り出すとそれで地面を掘った。
最初は黙って見ていた沖田さんだったけど、いつの間にか私のことを手伝ってくれている。
人を埋めるとなると相当な深さの穴が必要で人数分掘るので一苦労だった。
人数分の穴を掘り終わると次はその中に入れる。
手を胸の前で組ませるとそっと土をかぶせた。
泣いちゃ、駄目だ。
ここで泣いたら、動けなくなる。
そう思って必死にこらえた。歯でも食いしばってないと堪えられない。
辺りの日がすっかり落ちる頃になってようやく全員を埋め終わった。
一人一人に花を一輪ずつ置いて、中央に立つ。
最期に、皆が好きだった曲を。前に亡くなった家族に捧げていた愛と哀の歌を。