浅葱の桜



もう一度荷物を持ち上げると荷車の横に置いた。



「ふぅ〜、疲れた」



長い髪を掻き上げて、膝に手をつく。


もう、十五年も経ったんだ。花鳥座に入って。



「美櫻」

「菊姉ぇ!」



菊姉ぇは私の命の恩人。



小さい時に捨てられていたのを拾ってくれたらしい。


その時にこの桜紋の入った一振りの刀もあったらしいんだけどね。


じゃなきゃ、私はどこかも分からない場所で死んでいた筈。


あまりにも小さい時過ぎて両親なんて覚えてない。


でも私にとっては菊姉ぇがお姉さんで、ここの皆が家族。


だから寂しいなんて思った事もない。



「どうしたの? 菊姉ぇ」



今さっきまで姿が見えなくて心配してたんだけど。



「はいこれ。誕生日の贈り物よ」



渡されたのは綺麗に舗装された小さな小包。


中を開けてみると。



「わあっ」



その中に入っていたのは桜色の下げ緒。


とっても綺麗で、この刀に丁度似合いそう。



「ありがとう、菊姉ぇ! 大切に使うね!」



ぎゅっと抱きつく。毎年の事だけど何か貰えるって嬉しいなぁっ。



「こらっ、こんな事している暇があるなら桔梗のとこに行きなさい」



恥ずかしそうに頰を赤らめた菊姉ぇはぽんっと私の頭を叩く。


あっ! そうだった。桔梗さんとの約束があった。


……って、何で知ってるの? 菊姉ぇ。


表情を強張らせた私ににっこりと笑顔を返した菊姉ぇ。


ははっ。何でもお見通しだなぁ、菊姉ぇは!


私にはかないっこないや。


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