浅葱の桜




その夜。


することもなく、ただ縁側で月を見上げていた私を誰かが呼んだ。


私のことを知らない隊士じゃあないってことは……。



「おい、テメェはそこで何してやがる」

「土方さんでしたか」



土方さんは腕を組んだ状態で私のことを見下ろしていた。


相変わらず何でも様になる人だなぁ。


月の光に照らされた様子が更にその美しさを際立たせていた。


と言っても、中はあまりよろしくないけどね。



「総司は……って今日は夜番だったか……。どうした? 

まさか餓鬼みてぇに暗闇が寂しくて寝れねぇ何てこたぁねぇよな?」



むっ。何その馬鹿にした言い方!




「違います! 私はただ」

「ただ、何だ?」




沖田さんのことを考えていただけでっ、とはなぜか言えなかった。


変なところで口ごもった私の隣に座った土方さんは私の頰に触れたかと思うと、



ギューッ!


と私の頰を引っ張った。



「いひゃいいひゃいいひゃい!(痛い痛い痛い!)」

「何暗い顔してんだ? 悩んでることでもあんのかよ」



パッと手を離した土方さん。うううっ、まだ頰が痛い。



「あ、あの!」

「ん?」



私は素直に今一番疑問に思っていることを聞いた。



「沖田さんって、私のこと嫌いだと思いますか!?」


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