浅葱の桜
「そっから総司は女に近づかれることをとことん恐れるようになった。
顔がいいから慕われんのはあっちでもこっちでも変わんねぇ。
他の奴らが遊郭に遊びに行っても一人で残ってるくらいの女嫌いになってな」
「……相当重傷なようで」
まぁ仕方ないとは思うけど。
そんな目にあって女の子を取っ替え引っ替え遊んでるのよりよっぽどいい。
「だから安心していいんじゃないのか? あいつが嫌ってるのはお前じゃあなく––––」
「土方さんッ!」
「!」
土方さんの声を遮るほど大きな声が私の後方から聞こえた。
おおお、思わず声をあげそうになった。
「貴方は……なんでその話を佐久に……!」
「なんでって、聞かれたからに決まってんだろ?」
なぁと同意を求められてもっ!
「だからって、全部バラさなくてもいいじゃないですかっ!」
「……最初から聞いてたんですか?」
「ッ!」
一気に顔を赤くした沖田さんは言葉の出ない口をパクパクしている。
「なぁ〜んだ。止める気なかったんじゃねぇか」
「そ、そういう訳じゃ!」
立ち上がった土方さんはニヤニヤする顔を隠すことなく沖田さんに向ける。
「素直になれって。な、総司」
「はあぁっ!? 何をですかっ!」
ぽんっと肩を叩かれた沖田さんは噛み付くように土方さんを怒鳴り続ける。