浅葱の桜
どうやら店員さんは私たちの後ろにいる人に声を掛けたみたい。
「よっ! 蜜ちゃん!」
「…………」
溌剌とした笑顔を浮かべた男の人に無表情……というより厳しい顔をしている男の人。
正反対な二人に見えるな〜。
二人とも腰に二本の刀を差して浅葱色の羽織を着ていた。
武士か。失礼だけどそうは見えないな。
百姓に近い気がするけど……。
「沖田さんっ、今日は何個食べられます?」
店員さんは険しい顔をしている男の人に声をかける。
「…………五十」
「はいっ、分かりました」
ここにも居た! 大量に食べる人。桔梗さんを上回る人なんて居ると思ってなかったのに。
「なぁ、それって俺の分も含まれてるよな⁉︎」
「さぁ? 平助は平助で頼めば良いじゃん」
沖田……さん、か。
よく食べる人だね。
「おしひ〜!」
……私の隣にも沢山食べる人が居るけど。
山型に積まれたみたらしの皿が三つ。って、それが既に一つ消えてる⁉︎
恐ろしいよ––––。桔梗さん。
とか言いつつ一本拝借して食べる私。
「……美味しい」
みたらしの絶妙な味付けといい、団子の食感といい美味しすぎるんですけど!
こんなの本当にあるんだ……。
何だか病みつきになっちゃいそう。桔梗さんが甘味に嵌まるのも分かっちゃう。
それでも、大食いの部分は否定させて貰いますけどね!
量より質だから! これは質も良いから何も言えないけど……。