浅葱の桜
結局、私は彼に肩を貸してもらって近くにあるという彼の家まで来た。
でも、その場所は家というよりも店で。
「ここが……ですか」
「うん。そうだよ。ちょっと待っててね。包帯とかあればいいけど」
そう言って座敷の奥に消えた彼の背中を追いながら私はふと考える。
この場所って、確か枡屋が近かったような……。
首筋にあてられるとてつもなく冷たいもの。
「ひゃっ」
後ろを振り返るとそこには氷の塊を持った彼が。
「足貸してね」
頷く前に持ち上げられた足首にその氷があてられる。
その冷たさに肩を揺らすとその反応を見て彼は笑った。
……笑った?
そう思った時には私は彼に見下ろされており。
「君って……かわいいね」
頰を撫でる指に背筋がゾクりと震える。
「ねぇ……俺のものにしてもいい?」
それが何を意味してるかわからないほど子供でもない。
「だ、駄目……です」
くっと顎を持ち上げられる。
「くくっ……反抗的なのもいいね。屈服させたくなるよ」
耳元で囁かれた瞬間。
彼の体を押し飛ばしていて。
「ご……ごめんなさいっ」
そう言ってその家を飛び出した。