浅葱の桜
「大人しくしてろ。いいな」
「……」
「い、い、な!」
「は〜い」
私じゃ足手まといか。
そうだよね。私はすばしっこいだけが取り柄だし。
女の私が入っていっても死んじゃいそうだ。
「頑張ってください。沖田さん」
「分かってる」
「死んじゃ、駄目ですからね」
「……分かってる!」
怒られた。
そんなに怒られることしてないぞ?
「沖田くんは照れてるんですよ、きっとね」
「照れてる? 何を」
「それは自分で考えなさい」
か、考えろって……。
あの会話に照れる要素なんてないでしょ。
「行くぞ!」
「「おう!」」
浅葱色が揺れる。
その背中を見送りながら、私は底知れぬ恐怖を感じ体を震わせた。