浅葱の桜



––––その日の夜。



「っつ!」



駄目、声は出せない。物音を立てるな!


そう自分に暗示を掛けて物陰に身を潜めた。


この……奥には沢山の亡骸がある。


花鳥座の皆の亡骸が。



「な……なんなのよ……。貴方たちはぁっ!」



桔梗さんの泣き叫ぶ声が聞こえた。


それと共にザシュッと嫌な音。


人が倒れる音がして涙が溢れてきた。


桔梗さん……っ。


何で、何でこんな事になったの……?


皆、何にもしてないのに! 皆に幸せを分け与えていただけだよ?


涙が地面に染みを作って、視界が歪んでいく。


嫌だ、嫌だよっ。


こんな現実なんて!


誰か、嘘だと言って。馬鹿な私の悪い夢だとそう言ってよ!



「美櫻!」

「きく……ねぇ」



酷く慌てた様子の菊姉ぇ。


抱き締められた時の温もりで現実だって嫌でも理解させられた。



「皆……皆死んだの?」

「…………」



その無言が肯定だった。


縋り付くようにして着物を握り締めて菊姉ぇに抱きつく。



「お〜い、お菊さんよ〜」



菊姉ぇの向こうから低い男の人の声がして、肩を震わせた。


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