浅葱の桜
「––––おい。佐久」
「お、沖田……さん?」
あまりにも怖い声に思わず手を引っ込めてしまう。
「君は何者?」
「わ、私は美櫻です」
「そっちじゃない」
「え、や、桜庭 佐久ですッ!」
……なんで叫んでんだろ?
「君は僕の、新撰組の観察対象だ。勝手に消えるなんて許さないよ」
ゆっくりと立ち上がった沖田さんはその冷え切った目をその人へと向ける。
「それに、おじさんも。彼女のこと、勝手に奪わないでくれる?」
「フッ」
その人は一度は収めていた刀を抜いて、沖田さんへと向けた。
「小童が大層なことをほざく。よほど俺に殺されたいのか?」
「生憎と、おじさんの為に殺されてあげる体は持ち合わせていないんでねッ!」
キンッと、刀がぶつかり合う音が響く。
目の前で繰り広げられているのは殺し合いだ。それも純粋な剣術だけでの。
沖田さんは天才だ。それは分かる。でも、手負いの状況で花鳥座の皆を殺して見せたあの人に勝てるかと思うと……正直厳しいように見えてどうしようもなく不安になる。
ぎゅっと、きつく柄を握りしめた直後、今までとは違う音が響いた。